伊藤沙莉さんが朝ドラ『虎に翼』のヒロインを務め、注目を集めています。その演技力と魅力的な人柄で多くの視聴者を魅了していますが、実は彼女には知られざる壮絶な生い立ちがあったのです。今回は、伊藤沙莉さんの幼少期から現在に至るまでの道のりを詳しく紹介します。彼女の苦労と努力の軌跡を知ることで、より一層彼女の演技に引き込まれることでしょう。
伊藤沙莉の壮絶な生い立ち
幼少期の家庭環境
伊藤沙莉さんは1994年5月4日、千葉県千葉市で生まれました。しかし、彼女の幼少期は決して平坦な道のりではありませんでした。伊藤さんが1歳の時に両親が離婚し、2歳の時には父親が借金を残して蒸発してしまったのです。
父親は道路会社を経営していましたが、バブル崩壊の影響で会社が倒産。その後、家族を残して姿を消してしまいました。伊藤さんの母親は、父親の残した負債を抱え込み、女手一つで子供たちを育てることになりました。
伊藤さんの兄である伊藤俊介さん(お笑いコンビ「オズワルド」のメンバー)は、父親について「要するに稀代のぽんこつ親父。海賊並に酒を呑み、明日も生きていかなければならないということを毎日忘れているかのような日常を過ごす男であった」と語っています。
経済的困難と家族の支え
父親の蒸発後、伊藤家は大変な経済的困難に直面しました。2歳の伊藤さんは母親の幼馴染に預けられ、家族との別居を経験することになります。伊藤さんは「なぜ私だけ一人ぼっち」と幼心に思ったこともあったそうです。
一方、母親と叔母は軽トラックで寝泊まりをし、兄の俊介さんと姉の史織さんは、兄のサッカー仲間の家にお世話になりました。家族全員が一緒に暮らすことは、当時の状況では難しかったのです。
しかし、伊藤さんの母親と叔母は、家族が一日でも早く一緒に暮らせるようにと必死に働きました。朝は牛乳配達から始まり、一日中仕事に追われる日々が続きました。その結果、伊藤さんは「かぎっ子」として過ごすことになりました。
約3か月後、母親と叔母は家族全員が一緒に暮らせるアパートを見つけることができました。伊藤さんは、そのアパートについて「ボロボロのアパートでゴキブリも沢山同居していた」と語っていますが、家族が一緒に住めることが何よりも幸せだったそうです。
伊藤さんは「布団3枚で家族5人で寝る感じでした。むしろ皆を近くで感じられる、ギューってなるのが良くて、バラバラで寝ることは1回もなかった」と当時を振り返っています。
『虎に翼』での伊藤沙莉の演技力
寅子役への没頭
伊藤沙莉さんが演じる『虎に翼』のヒロイン寅子は、女性ではじめて裁判官になった三淵嘉子をモデルにした人物です。決して周囲に媚びず、我道を行く信念の人で、上司にも言いたいことをぶちまけるような強い性格の持ち主です。
法律では男女平等になったとはいえ、やはり男性が優位だった戦後の時代背景の中で、誰に遠慮することなく自分の意見を声に出す寅子の姿は、多くの視聴者の心を掴んでいます。
伊藤さんは寅子役を演じるにあたり、徹底的に役作りに取り組みました。三淵嘉子の生涯や当時の社会背景を詳しく研究し、寅子の内面を深く理解しようと努めました。また、法律用語や裁判の流れなども勉強し、リアリティのある演技を目指しました。
視聴者からの反響
伊藤沙莉さんの寅子役の演技は、視聴者から大きな反響を呼んでいます。SNSでは「伊藤沙莉さんの演技に引き込まれる」「寅子の強さと弱さを見事に表現している」といった声が多く寄せられています。
特に、寅子が判事となり、娘と実弟と義姉とふたりの甥の5人の食い扶持を稼ぎだし、まるで家長のような存在になるシーンは、多くの視聴者の心に残っているようです。
一方で、寅子の自由でワイルドな振る舞いに戸惑いを感じる視聴者もいるようです。仕事に行きたくないと畳の上を転がりまくるシーンや、お酒の席に参加して帰宅が遅くなるシーンなどは、朝ドラのヒロインとしては異色の描写だと話題になっています。
しかし、そのような寅子の人間味あふれる姿も、伊藤さんの演技力によって見事に表現されており、視聴者の共感を得ているのです。
伊藤沙莉のこれまでの代表作
子役時代のブレイク
伊藤沙莉さんは9歳の時、2003年にドラマ『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』でデビューしました。このデビューのきっかけは、通っていたダンススクールで見つけたオーディション広告でした。友達に誘われて「遊びに行く感覚」でオーディションを受けたところ、見事に合格したのです。
その後、2005年に放送されたドラマ『女王の教室』でいじめっ子の役を演じ、注目を集めました。子役ながら、複雑な心理を持つ役柄を見事に演じきり、その演技力の高さが評価されました。
2007年には映画『兎のダンス』で主演を務め、子役から若手女優への転換期を迎えました。この作品では、複雑な家庭環境で育つ少女を演じ、その繊細な演技が高く評価されました。
大人の役者としての評価
伊藤さんが大人の役者として本格的に注目されるようになったのは、2017年のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』での安部さおり(安部米子)役でした。この作品での演技が評価され、一躍注目を浴びることになりました。
その後も、2019年の映画『チワワちゃん』や2020年の『タイトル、拒絶』など、個性的な作品に次々と出演。特に『タイトル、拒絶』では、東京国際映画祭で東京ジェムストーン賞を受賞し、その演技力が国際的にも認められました。
2021年には、映画『ちょっと思い出しただけ』や『すずめの戸締まり』に出演。特に『ちょっと思い出しただけ』では、主演を務め、複雑な心理を持つ女性を演じきりました。この演技でブルーリボン賞助演女優賞を受賞し、演技派女優としての地位を確立しました。
テレビドラマでも、『いいね!光源氏くん』や『ミステリと言う勿れ』、『拾われた男』などに出演し、多彩な役柄を演じ分けています。特に『ミステリと言う勿れ』では、原作とは異なるキャラクター性を持つ役を演じ、視聴者に新たな魅力を見せました。
伊藤沙莉の魅力
自然体な演技スタイル
伊藤沙莉さんの魅力の一つは、自然体な演技スタイルです。彼女の演技は、まるでカメラの存在を忘れているかのような自然さがあります。これは、幼少期からの経験や、日々の努力の賜物でしょう。
『虎に翼』の現場でも、伊藤さんは役になりきっているという印象を周囲に与えています。共演者の一人は「伊藤さんとお話ししているというよりはトラちゃんと会話している感じ。カメラが回って切り替えるという感じでなく、現場に入った時から切り替えているんだろうな」と語っています。
また、伊藤さんは役作りにも熱心で、台本の読み込みや役のバックグラウンドの研究に多くの時間を費やしています。そのため、どんな役でも自然に演じることができるのです。
SNSでの人気の理由
伊藤沙莉さんは、SNSでも多くのファンを持っています。その理由の一つは、彼女の飾らない人柄です。伊藤さんは自身のSNSで、日常の様子や撮影の裏話などを頻繁に投稿しています。その内容は、芸能人らしからぬ素朴なものが多く、ファンに親近感を与えています。
また、伊藤さんは自身の経験や思いを率直に語ることも多く、そのような姿勢がファンの共感を呼んでいます。例えば、幼少期の苦労や、演技に対する思いなどを赤裸々に語ることで、多くの人々の心を掴んでいるのです。
さらに、伊藤さんのユーモアセンスも人気の理由の一つです。時にはシュールな投稿や、自虐的なコメントで笑いを誘うこともあり、そのような面白さもファンを惹きつけています。
伊藤沙莉の私生活
結婚と仕事の両立
伊藤沙莉さんは2025年1月4日、自身のインターネットラジオ番組「伊藤沙莉のsaireek channel」で、劇作家で脚本家の蓬莱竜太氏と結婚したことを発表しました。2人は18歳差のカップルとして注目を集めていましたが、2024年末に婚姻届を提出したそうです。
伊藤さんは番組で「昨年、ギリギリになりましたけど、ギリギリとかじゃないんだけど(笑)、籍を入れさせていただきまして。みなさんにご報告したいなと思っていた」と幸せいっぱいに語りました。
蓬莱氏とは、伊藤さんが蓬莱氏の劇団「モダンスイマーズ」のファンだったことがきっかけで知り合いました。2021年に蓬莱氏が手がける舞台に出演することになり、稽古前の会食で意気投合したそうです。
プロポーズのエピソードも明かされ、『虎に翼』の撮影期間中、疲れて帰宅した伊藤さんを蓬莱氏が新沼謙治の「嫁に来ないか」を熱唱して出迎えたそうです。伊藤さんは「涙が止まらなくなっちゃって’沙莉ちゃんお返事は?’って聞かれて、しますしますって」と照れながら語りました。
結婚後も伊藤さんは変わらず仕事に励んでおり、結婚と仕事の両立を図っています。蓬莱氏も伊藤さんの仕事を全面的にサポートしているそうで、お互いの仕事を尊重し合う関係を築いているようです。
今後の活動への期待
伊藤沙莉さんは結婚後も精力的に活動を続けています。『虎に翼』の放送が終了した後も、複数の映画やドラマへの出演が決まっているそうです。
特に注目されているのは、蓬莱竜太氏が脚本を手がける新作舞台への出演です。夫婦で創作活動に取り組むことで、新たな化学反応が起こることが期待されています。
また、伊藤さんは声優としての活動も続けており、アニメ映画への出演も決まっています。2022年に公開された新海誠監督の『すずめの戸締まり』では二ノ宮ルミ役を演じ、その独特な声質で個性的なキャラクターを見事に表現しました。
さらに、2025年に公開予定の『風のマジム』では主演を務めることが決定しています。沖縄を舞台にしたこの作品で、伊藤さんは那覇で豆腐店を営む家族と暮らしながら、通信会社で働く伊波まじむを演じます。ラム酒の魅力に取り憑かれたまじむが、南大東島産のサトウキビからラム酒を作る企画に挑戦するという、心温まるストーリーが展開されます。
伊藤さんは本作について「何故だか懐かしさを感じるようなあたたかいお話だと思いました。出会いや発見や人の思いを通してじんわりと成長していく。優しいサクセスストーリーです。方言や土地に触れて撮影するのが今からとても楽しみです」とコメントしており、彼女の演技に対する期待が高まっています。
また、2025年には『爆弾』という作品にも出演予定で、伊藤さんの俳優としての幅広い活躍が期待されています。
まとめ
伊藤沙莉さんは、壮絶な生い立ちを乗り越え、現在では朝ドラのヒロインを務めるほどの実力派女優に成長しました。彼女の自然体な演技と魅力的な人柄は、多くのファンを魅了しています。結婚後も精力的に活動を続ける伊藤さんの今後の活躍に、ますます期待が高まっています。